2007年6月20日水曜日

カリフォルニア カルト大会


王様会  
カリフォルニア カルト大会 2007年6月20日



1990年代初頭から注目を浴びるようになったカリフォルニアで最も手に入りにくい限られたワインにつけられた総称が「カルトワイン」です。ロバートパーカーが満点かほぼ満点をつけたこれらの高級ワインは当然生産量が少なく一般のワインショップに並ぶことはありません。厳選された畑に日照を考えて最適な方位に畝をつくり、ひっそりとあるブドウ畑は外から見分けるのも至難の業ですがこれらの畑に立つとブドウの力やオーラが感じられます。これらの畑から取れたブドウにヘレン・ターレー、ハイディ・バレット、ミシェル・ローランなどの優秀なワインメーカーが厳密で繊細な醸造法を用いて作られたワインが本日のワインです。

アメリカが好景気の真っ只中にはDean & Delucaなどのナパの高級ワイン店では「抱き合わせセット」としてにどれか一つのカルトワインを中央に、その他のお店が売りたいワインを従えて組み合わされた5本セットで5000ドルとか平気で値段がつけられていることがありました。これらのワインが手に入りにくい理由の主たる理由はこれらのワインはメーリングリストの客にしか定価で一般販売はしないからです。しかも、このメーリングリストたるや申し込んだとしても数千番の順位で、生産量が数百ケースですので、つまりのところ、永遠に定価で手に入れることは不可能なのです。これらはオークションや高級レストランのワインリストに載せられているものです。オークションに集まっている人たちはレストランやワイン業者で消費者はかれらから買うことになります。

 なぜ、カルトと言われるのでしょうか? カルトとは英語で熱狂的な信者がつくる宗教団体を指しますが、これらのワインについても、ワインを中心に人が熱狂するのでこのような名前がついたと言われています。カルトワインはネットバブルの時代とともに大きく膨らみ伝説のワインとなりました。2000年代に入り一般の高級ワインの品質が大きく伸びて次々とニューフェースが多く出てきたことで、カルトワインへの熱も往時とは様変わりしました。それでもカルトといわれるワインは別格として伝説の地位を譲る気配はありません。生産量の少ないこと、小売がされていなこと(一般に手に入れようとすると値段が高いこと)、品質が優れていること、評判が人を呼ぶ、のサイクルがカルトたる由縁でしょう。



Starter:
Shramberg  Banc de Blancs  2003

カリフォルニアは残念ながらスパークリングワインの類では「カルト」は出現しておりませんが主役を待つスターターとしては申し分ないところです。2003ヴィンテジはリリースされたばかりですがWine Enthusiastsのスパークリングワインの分野で最高の94点をとったものなので試してみたいと思った次第です。

テイスティングコメント: 100%シャルドネ、シュランベルグが出しているブランドブランの中ではこれまでで最高の出来といえる。ほのかなライム、ピーチ、ブリオッシュの香りに豊かな味わいと滑らかな舌触り、長いフィニッシュが特徴。


  Kistler 1997 Vine Hill Vineyard Russian River Valley

生産者; キスラーヴィニヤードはブルゴーニュ式のワインづくりのこだわる生産者でソノマのロシアンリバー(このワインの名前がついているVine Hill Road)にあります。セバストポールという地区は朝晩霧につつまれる田舎町です。(ちょっと話しがずれますが去年はこの地区でブルゴーニュになぞったHospices of Sonomaというピノノアールの大会が開かれました。)

キスラー紹介; 1979年が最初のヴィンテジで家族経営するソノマの小さなワイナリー。現在では合計で約25,000ケースの生産量。スティーブ・キスラーとマーク・ビクスラーが醸造担当、キスラーはソノマやナパのあちこちの畑からブドウを買い付けてシングルヴィニヤードのワインを作っている。シャルドネは伝統的なフランス式で醸造され乳酸発酵を行う。ワインは殆どがメイリングリストの顧客へ販売されている。

テイスティングコメント: 熟したイチジク、レモン、カスタード、メロン、ローストした穀物、ヨード香、ももの皮、春の花の香りなどが豊かに凝縮されている。冷たい鉄や濡れた石の感じもある。味わいは豊かで口のなかで空気のように立ち上がる。フィニッシュは舌に長く余韻が残る。

生産者のコメント; スティーブキスラーはこのヴィンテジが、それまでに彼が作ったもののなかでは最高の出来だったと述べている。1997年は収穫が多かったが、凝縮感に問題はなかった。このヴィンテジは1995年と同じようなしっかりした酸がフルーツを支えており躍動感が感じられる。野生酵母と人工酵母の両方を用いて発酵させオリに通常より長く浸して攪拌を続けた。完全な乳酸発酵を行った後にフィルターなしでビン詰めした。

WS 91;  WA  91-92


Colgin 1997 Herb Lamb Vineyard, Napa Valley
生産者紹介; アン・コルギンが1992年にはじめたものだが、すぐにナパで最も手に入りにくいワインとなった。ヘレン・ターレー[yi1] (Wine Goddessワインの女神とも言われていた。)が醸造を受け持ち、1999年にマーク・オーバートに委譲した。この1997ハーブ・ラム ヴィニヤード(ハウエルマウンテンの斜面にある)は生産量がたったの400ケース。偉大なワインがそうであるようにコルギンの思想は生産量を抑えたブドウ栽培とその手入れ、テロワールの味わいを失わないようにワイナリーへのブドウの運搬の早さをも徹底している。小売販売はしておらず4000名も待つメイリングリストの上位客へのみ定価で販売している。

テイスティングコメント:
深いルビーレッド、ブラックラズベリー、ブルーベリー、ラベンダー、リコリス、トースト香がありしっかりした骨格でバランスが良い。よく熟したタンニンが溶け込んだ凝縮したフルーツの複雑なアフターが45秒もつづくとパーカー氏は述べております。

ワイナリーコメント: 黒・青・紫の濃厚な色あいに野生のブルーベリー、蘭、アカシアの花、スモーキーなオーク、クレーム・ド・カシス リキュールの香がある。滑らかでありながら力強さをもち、タンニン、酸、アルコールが素晴らしいハーモニーを奏でている。美しくピュアなフルーツとベルベットのような舌触りが素晴らしいアフターへと続く。100%フレンチ小樽で18ヶ月熟成し、フィルターや清澄なしでビン詰めされました。

WA: 99


Bond 2000 Melbury, Napa Valley

ハーランの新プロジェクトがボンドです。ビル・ハーランとボブ・レヴィ、ミシェルローランの合作で作られているもので、コンセプトは100%テロワールを表現するカベルネソービニヨンを作るというものです。現在はブドウ畑が違うメルベリー、セントエデン、ヴェシーナ、プルーリバスの4つがリリースされています。ここでもハーラン同様にメーリングリスト販売方式がとられています。(それぞれ約600-700ケース)

メルブリーは1999年ヴィンテジから生産され、ナパのヘネシー湖(ラザフォードの北東)の斜面にあるブドウを使っています。ここのブドウは黒や赤いフルーツの香りが強く多層の香りがあります。凝縮感が特徴ですがここのワインの特徴はエレガンスとフィネスです。675ケースのみの生産。

テイスティングコメント; モカの香りがするオーク、熟したブラックチェリー、リコリスの香りに杉のニュアンス、チョコレートやバニラの味わいが感じられる。ミディアムからフルボディの間。最初は果実香が強いが後半に少し細くなるが熟してタンニンがアフターに快い。

WS: 94、 WA: 90

Harlan 1991 Napa Valley
生産者; ビル・ハーランが所有するハーランエステートはオークヴィルの西側にあり、彼はオールドワールドの第一級のワインに匹敵するカリフォルニアのワインを作ること目指してワインづくりを始めた。0.94平方キロの畑にはカベルネソービニヨン、メルロー、カベルネフラン、プチベルドが植えられ、現在はミシェルローランとボブ・レヴイが醸造担当している。このヴィンテジの生産量は935ケース。

テイスティングコメント:
(パーカー) ブラインドでメドックのボルドー一級と間違えた人がいた最も素晴らしいワインの一つである。濃い紫色(リリース時)で複雑な香りがある。ミネラル、フルーツケーキ、杉、オークのトースト香、きれいなブラックカランツなどである。口に含むと大型のワインであるが非常にバランスがとれていてしっかりしたタンニンも熟した果実でうまく調和がとれている。

WS; 91、  WA; 98

Shafer Hillside Select 1996 Stags Leap District、Napa Valley

スタッグスリープ・ディストリクトはCask23などでおなじみのStags Leap Wine Cellarsを初めとして、ここならではのカベルネソービニヨンが生産される。この地区のブドウは力強さとベルベットのような舌触りの滑らかさが特徴とされている。シェーフェーのヒルサイド・セレクトはワイナリーを囲む斜面のブドウ畑を持ち長く高品質を保ち続けている家族経営の生産者として特記される。

1996ヴィンテジワインの中でスーパースター。スパイシーチェリー、杉、カレンツ、プラムなどの香り高く、しっかりしたボディ、フルーツの凝縮感、フルーツのきれいさなどが非常にバランスが良い。アフターは40秒もつづく。2000ケース生産。





[yi1]グレースファミリーのディックグレースはワインの85%はブドウ畑で出来ると考えている一方で、彼女は人間の手やボルドー式の発酵や熟成法が豊かなワインを作ると考えていた。興味深いコメントは「自然だけではワインができないし、良いワインは難しい。現実は、人間がすべての生産段階で手を入れるべきで、ワインは人間の労力の賜物である。高品質なワインは偶然にできるものではなく、品質にたいする絶え間ない努力の結果である」と語っている。彼女はブドウ畑についても同様の考えをもち、栽培スタッフにまかせっきりにせず、自分も作業に加わることも多いし、彼らに指示を与える。これらはブライアントファミリーや自分のブランドであるマーカッシンにもあてはめている。